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ぺいちゃんねる'16

続いてはこちらの曲。

村上○樹のパロディゲイ小説を再掲してみる。

昔amebaで書いていた村上○樹のパロディ小説を発掘したのですこし修正して載せます。
こんなの書くなんて昔のおれどんだけ暇なんだよ!って感じですね!

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 僕は闇の中で、獲物を狙う梟のように身をひそめた。目をしっかりと闇に慣らし、「じぶん好み」の誰かが闇の中に姿をあらわすのを待つ。

 どこかで誰が喘ぐ声が、妙に艶っぽく聞こえる。それは獣の雄たけびのようであり、ときに処女膜を破られた少女の叫びのようにも響き、僕はそれが、成人した男性の声帯から発せられているものだということをつい忘れてしまいそうになる。

 

 でも僕はそのことを忘れてはならない。

 この場所にいるのは、全員男性―それも、みんな肉体的接触に餓えている。そしてもちろん僕も例外ではない―なのだ。僕は休憩室から出てきた男たちの方にしっかりと目線をやった。もちろん積極的な視線は送らない。あくまでもクールに。僕はそうやって、なんとか最低限の自尊心を体現する。

 彼らは血眼で「じぶん好み」の男を探している。すれ違う一瞬で全身をくまなく目視し、彼らの中の基準に照らし合わせて鑑定していく。

 そのうちのひとりが僕に興味をしめし、手を伸ばしてきた。

 

 僕は拒否するわけでもなく、まったくの無防備さで彼を受け入れた。

 「個室、行こうか」と彼は言う。

 僕は、彼に手を引かれながら、残る男たちの顔を注意深く観察した。

 

 もし僕がここで、この手をふりほどいて他の男の元へ向かったら、この人はどういう顔をするだろう。この人は、きっとその顔、その身体で今までに多くの男を魅了し、関係を結んできたのだろう。この世界でセックスするということは、そういうことだ。顔つきや、身体、髪や髭など、わかりやすいアイコンが揃っていればいるほど、魅力的だということになる。その点で、この男は十分に魅力的であった。

 

 そんな彼を、この一見純朴そうな僕が、拒否する。これ以上の屈辱はないはずだ。

 彼は空いている個室を探しながら、どんどん奥へ進んでいく。

 僕が、いつ彼を裏切ろうか、そんなことを考えていたとき、別の自分がひょいと姿を現した。

 

 「君は、この人に抱かれたがっているんだ」と別の僕が言う。

 いや、そんなことはない。確かに僕好みではあるけれど。

 「我慢をしても良いことはない。この人に、自分の性欲をすべてぶつけてみるんだ。そうすれば、きっと色んなことが上手くいく。発展場とは、そういう場所なんだ。そして、僕たちの行うセックスというものは、そういうものなんだ。そうすることで、やっとすべてが完結に向けて動き出す。君もよく知っているだろう?相手が好きかどうかなんか、どうでもいいはずさ。肉体は常に正直で、常に開かれていなければならない」

 

 別の僕がそう言い切るのと同時に、握られていた手が解放された。
 僕が口を開くより早く、彼は腰に手を回し、誰もいない個室のなかへエスコートする。
 暗闇のなか布団の感触が確かに足に伝わる。
 彼がドアを閉めると、僕は強く目をつぶり、深呼吸した。

 「肉体は常に正直で、常に開かれていなければならない」
 別の僕が、再びゆっくりと唱えた。


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おしまい。